こんにちは!「スポーツシューズNAVI」のFです。
「高校生になって陸上の短距離を始めたけど、どんなシューズを選べばいいの?」と悩んでいませんか。陸上部に入部したばかりの初心者の方や、記録が伸び悩んでいる中級者の方にとって、シューズ選びは本当に難しい問題ですよね。
お店に行くと、アシックスやミズノ、ナイキ、アディダスなど、たくさんのメーカーからスパイクや練習用シューズがずらりと並んでいて、一体なにが自分に合っているのか、判断基準が分からないという声もよく聞きます。
もしかして、「とりあえず1足、万能な靴があればいいや」と思って、クッション性のあるランニングシューズ1足ですべての練習をこなしたり、逆にいきなり高価なスパイクを買ってしまったりしていませんか?
実は、それがパフォーマンスの停滞や、シンスプリント・足底筋膜炎といった辛い怪我の始まりかもしれません。陸上の短距離は、練習内容によってシューズを戦略的に使い分けることが、安全に上達するための「一番の近道」なんです。
この記事では、高校生の皆さんのための陸上短距離シューズの「おすすめの選び方」を、①日々の練習を支える「アップシューズ」、②技術を磨く「トレーニングシューズ」、③試合で輝く「スパイク」の3つのカテゴリーに分けて、目的別・レベル別に分かりやすく徹底解説していきますね。
- なぜ短距離選手に3種類のシューズが必要なのか
- 練習用シューズ(アップ/トレーニング)の役割と人気モデル
- 初心者から上級者まで、レベル別のスパイクの選び方
- 意外と知らない陸上スパイクのルール(ピンの長さ)
高校生陸上短距離シューズのおすすめ選び方

まず一番大事なことからお話ししますね。高校生スプリンターが揃えるべきシューズは、実は1足じゃなくて「3種類」あるんです。この使い分けこそが、高校3年間のパフォーマンスアップと、深刻な怪我を予防する最大の鍵になります。
失敗しないための3種類のシューズ
陸上短距離と一口に言っても、練習メニューは非常に多彩です。軽いジョグ、技術を体に染み込ませるドリル、全力に近いスピードでの走り込み、そして試合本番…。これらは、足にかかる負荷や求められる感覚がまったく違います。
それなのに、たった1足のシューズ(例えばクッションの効いたランニングシューズ)ですべてをこなそうとすると、どうなるでしょうか? ジョグには良くても、スピード練習では反発が足りず、ドリル練習では地面の感覚が掴めません。逆にスパイク1足では、日々のジョグで足への衝撃が強すぎて、疲労骨折などの重大な怪我のリスクを著しく高めてしまいます。
そこで、高校生、特に陸上競技を始めたばかりの初心者の選手にこそ知っておいてほしいのが、この「3シューズ・システム」という考え方です。
短距離選手の「3シューズ・システム」
- 競技用シューズ(スパイク): 試合および、タイム測定など本番同様の高強度な専門練習用。パフォーマンスを最大化する「武器」です。
- 練習用シューズ①(アップシューズ): ジョグ、走り込み、インターバル走など、日々の基本練習用。練習の「量」を支え、足を保護する「盾」の役割を果たします 。
- 練習用シューズ②(トレーニングシューズ): 技術(ドリル)練習や、スパイクが履けない冬季練習の代替用。練習の「質」を高め、正しい技術を習得するための「教科書」です 。
新入生・初心者へのアドバイス

「いきなり3足も揃えるのは大変…」と感じるかもしれません。その通りです。すべてを一度に買う必要はありません。
もしあなたが新入生なら、まずは練習の土台となる「練習用シューズ①(アップシューズ)」 と、学校のグラウンド(土)でも使える「土兼用の初心者向けスパイク」 の2足から始めるのが最も現実的でおすすめです。
そして、競技レベルが上がり、より専門的な技術練習が必要になったタイミングで、「練習用シューズ②(トレーニングシューズ)」 を買い足すのが、賢いステップアップの方法かなと思います。
練習用アップシューズの役割と選び方
「アップシューズ」は、すべての短距離選手が最初に購入すべき最も重要な一足であり、練習の土台そのものです 。
主な用途は、ウォームアップやクーダウンの軽いジョグ、インターバル走、そして特にスパイクを履けない冬季練習期間中の「走り込み」(high mileage running)など、練習の「量」を安全にこなすことです 。
そのため、このカテゴリーのシューズには、一見相反するような5つの機能が、高いレベルでバランスされていることが求められます 。
アップシューズに求められる5つのバランス
- 軽量性: 重い靴はスピード練習の妨げになります。スプリンターの動きを邪魔しない軽さが必須です。
- 反発性: スピードを拾いやすくするため、地面からの反発(リバウンド)を適切にサポートする機能が求められます。
- クッション性: 日々の走り込みやジョグで蓄積する、足への衝撃を和らげ、怪我を防ぐために不可欠です。
- 安定性: 練習で疲れてきてもフォームが崩れにくいよう、かかとや足首をしっかり支える安定性も重要です。
- 耐久性: 毎日のハードな練習に耐えられるタフさ。すぐにソールが減ったり、アッパーが破れたりしない耐久性も経済的に大切です。
このバランスが非常に重要で、例えばクッション性だけを追求すると重くなりすぎ、短距離のスピード練習に対応できません。逆に反発性だけを求めると、日々のジョグで足を痛めてしまうリスクが高まります。
まさに「部活シューズ」と呼ばれる、日本のメーカー(アシックスやミズノ)が長年培ってきた、このバランスに優れたモデルを選ぶのが、高校生にとっては最初の正解だと言えますね。
アシックスの練習用シューズ
アップシューズの中でも、特に中学校・高校の陸上部において絶大な人気と信頼を誇るのがアシックスです。長年の定番モデルには、それだけの理由があります。
アシックス ライトレーサー6 (ASICS LYTERACER 6)
まさに「王道」や「部活シューズ」と呼ぶにふさわしい、アシックスのロングセラーモデルですね 。先ほど挙げた5大要素(軽量性、反発性、クッション性、安定性、耐久性)のすべてで非常に高いバランスを誇ります。
ミッドソール(靴底の中間層)には、軽量でありながら高い反発性を生み出す素材「FLYTEFOAM PROPEL」を搭載し、スピード走行にもしっかり対応 。同時に、最も摩耗しやすいかかと部分には、高耐摩耗ラバー「AHAPLUS」を採用し、日々のハードな練習にも耐えうる抜群の耐久性を確保しています 。
バランスの取れた設計は、短距離、ハードル、跳躍など、まだ専門種目が定まっていない新入生の「最初の一足」として、これを選べばまず間違いない、と自信を持っておすすめできる一足です 。
アシックス ターサーRP3 (ASICS TARTHER RP3)
ライトレーサーと並んで、多くの指導者や選手から練習用シューズとして推奨されるのが「ターサーRP3」です 。
最大の特徴は、アシックスの最上級スパイクである「METASPEED」シリーズと同じ靴型(ラスト)を採用している点です 。これにより、特に指周りのフィット感が非常に高くなっています。
設計思想として「自分の足で路面をとらえて走ることができる」点が重視されており 、ライトレーサーと比較すると、より反発性やスピード性を重視した設計と言えます。ジョグだけでなく、スピードに乗ったテンポ走やインターバル走でも真価を発揮するため、「路面を掴む」感覚を養いたい中級者以上の選手のアップシューズとして最適ですね。
ミズノの練習用シューズ
アシックスと人気を二分するのが、同じく日本のスポーツ界を牽引するミズノです。ミズノもまた、部活生に向けた素晴らしいシューズを提供しています。
ミズノ ウエーブデュエル4 (Mizuno WAVE DUEL 4)
ミズノが提供する、短距離選手の練習用シューズの定番モデルが「ウエーブデュエル」シリーズです 。
前モデル(3)と比較してソールが「柔らかく」なり、「履きやすくなった」という評価があります 。また、ドロップ(つま先とかかとの高低差)が2mm低くなっており 、これは長距離寄りの設計変更とも取れますが、一方で「より自然な接地感覚」を促す設計とも言えます。
スピードトレーニングに対応しつつも、足への負担を軽減し、快適な履き心地を重視する選手に適しているかなと思います。アシックスのフィット感がしっくりこない場合は、ぜひミズノも試着してみてください。
技術用トレーニングシューズの重要性
アップシューズが練習の「量」と「足の保護」を担うのに対し、この「特化型トレーニングシューズ」は、練習の「質」と「技術の習得」を担います。これは「スプリンター専用」に設計されたカテゴリーです 。
中級者以上を目指すなら、ぜひ揃えたい「第二の一足」ですね。
「ティーチング・ツール」としての役割
このシューズ群の存在意義は、単に「練習で履く靴」ということではありません。これらはスプリント技術を習得するための「教育的な道具(Teaching Tool)」として設計されています 。
最大の特徴は、ソールが非常に薄く、ドロップ(高低差)がほぼ 0mm(ゼロミリ)に設計されている点です 。これにより、選手は地面の感覚を足裏でダイレクトに感じることができます。これが「スプリント技術の習得」に最適とされる理由です 。
なぜ0ドロップが良いの? 保護(アップシューズ) vs 強制(トレシュー)
クッションが豊富なアップシューズは足を「保護」してくれますが、一方でかかとからの接地(ヒールストライク)のような、スプリントにおいて非効率な動作を「許容」してしまう側面もあります。
対照的に、クッションのないフラットなトレーニングシューズは、足裏全体で地面を捉え、反発をもらうという正しい接地動作を「強制」します 。悪い接地をすると、足にダイレクトに衝撃が来るため、体は自然と効率の良い動きを探し始めるわけです。
特に、スパイクを履くことができない冬季練習期間中 や、日々のスプリントドリル において、このシューズで「地面をつかむ感覚」 や「足全体を使う感覚」 を養い続けることは、シーズン中のスパイクでのパフォーマンスに直結する、極めて戦略的なトレーニングと言えます。
陸上選手の冬の過ごし方や、冬季練習の重要性については、「陸上選手の冬季練習メニューとシューズ選びの重要性」でも詳しく解説していますので、参考にしてみてください。(※内部リンク設定の仮定)
代表モデルの比較(ウインドスプリント vs ビルトトレーナー)
代表的な2モデル「ウインドスプリント3」と「ビルトトレーナー2」の比較は、単なる製品スペックの差ではなく、選手のニーズやトレーニングの「哲学」の選択を反映しています 。
| モデル名 | メーカー | 特徴(重視する点) | 主な適性トレーニング |
|---|---|---|---|
| ウインドスプリント3 | アシックス | スピード重視。スパイク同様のアッパーでフィット感◎ 。フラットソールで接地と体重移動がしやすい 。 | スプリントドリル、技術練習、流し(スピード感覚の確認) |
| ビルトトレーナー2 | ミズノ | 安定感重視。よりガッチリした作りで、土台としての安定性が高い 。 | ジャンプトレーニング、ウェイトトレーニング、負荷の高いドリル |
純粋にスプリントの「感覚」や「スキル」を研ぎ澄ませたい選手はウインドスプリント3 、冬季練習でジャンプ系やフィジカル系のトレーニングも多くこなす選手はビルトトレーナー2 、といった選び方ができるかなと思います。
レベル別・高校生陸上短距離シューズのおすすめ

ここからは、いよいよ試合で使う「スパイク」の選び方を見ていきましょう。スパイクは短距離選手にとっての「武器」です。練習用シューズ以上に、自分の現在のレベル、筋力、そして走法に合ったものを選ぶことが、自己ベスト更新に直結しますよ。
陸上スパイクの基本的な選び方については、「【2024年】陸上スパイクのおすすめ15選!短距離・中距離・長距離・初心者向けに選び方を徹底解説」でも詳しく解説していますので、ぜひ合わせてお読みください。(※内部リンク設定の仮定)
スパイク:初心者(土兼用も)
陸上部に入って初めてスパイクを買う新入生や初心者の皆さんは、まだ100m専門か、400mやハードルも走るか、跳躍もやるか…など、専門種目が定まっていないことも多いですよね。
また、練習場所が学校のグラウンド(土=アンツーカトラック)であることも多いはずです。
そうした場合、まずは「オールラウンドモデル」を選ぶのが最も合理的で一般的です。これらは、競技場のタータンだけでなく、学校のグラウンド(土)でも使用できる「土兼用(アンツーカトラック兼用)」 になっていることが最大の特徴です。
クッション性や安定性を重視した作りで、短距離から中・長距離、走幅跳まで、幅広い種目に対応できるように設計されています 。
ミズノ エックスファースト3 (Mizuno X-FIRST 3)
「新入生」「初心者」向けに設計された、ミズノの定番エントリーモデルです 。土兼用で、短・中・長距離から走幅跳まで対応する「最初の一足」として最適な汎用性を持ちます 。
アシックス エフォート13 (Asics EFFORT 13)
こちらも「陸上初心者用」「種目全般対応」として設計された、アシックスの定番オールラウンドモデルです 。エックスファースト3と同様、まずこれを買っておけば間違いないという安心感があります。
最初から短距離専門なら?(初心者向け専門モデル)
もし選手が入部時から「100mと200mを専門で頑張る!」と決まっている場合、オールラウンドモデルよりも一歩進んだ「短距離初心者用」のモデルもおすすめです 。
アシックスの「ヒートスプリント13」と「ヒートフラット12」がその代表格ですが、この2つの最大の違いは「ソールの厚み」です 。
- アシックス ヒートスプリント13 (100m/200m向け): 比較的ソールが薄めで、地面からの反発を感じやすく、スピードを出しやすい設計です 。
- アシックス ヒートフラット12 (400m/ハードル向け): 比較的ソールが厚めで、足への負担を軽減し、レース後半の粘りをサポートする設計です 。
自分のやりたい種目や、足への負担をどれだけ減らしたいかに合わせて選ぶと良いですね。
スパイク:中級者のステップアップ
11秒台を目指すような中級レベル(脱初心者)になってきたら、土兼用スパイクからは卒業です。自己ベストを本格的に追求する段階にくれば、練習用とは別に、試合用の「タータン(全天候型)専用スパイク」を準備しましょう 。
土兼用スパイクと比較し、タータン専用スパイクは、軽量性、反発性、そして短距離に特化したソール形状(前足部の傾斜など)において圧倒的に優れており、自己ベストの更新に直結するためです 。
ただし、ここでいきなりトップ選手が履くような「高反発(=プレートが硬い)」モデルを選ぶことは推奨されません。まだ筋力や技術が伴わない選手が硬すぎるプレートを履くと、足が負けてしまい、シンスプリントや足底筋膜炎といった怪我のリスクを逆に高めてしまうからです 。
中級者の皆さんが選ぶべきは、「反発力を備えながらも、適度に屈曲性(曲がりやすさ)も備えた、バランスの良いスパイク」です 。
アシックス SPブレード10 / サイバーブレード17
アシックスが「短距離中級者用」として明確に位置付けているモデル群です 。硬すぎないプレートが、筋力アップ途上の高校生の走りを適切にサポートしてくれます。多くの高校生スプリンターがこのレベルのスパイクを経て上級者へとステップアップしていきます。
ミズノ エックスブラストネオ2 (Mizuno X BLAST NEO 2)
「爆発級のレベルアップ」を遂げたモデルとレビューされることもある、ミズノの中級者向け注目株です 。特に注目すべきは、「400m向きのスパイクってない」という市場の中で、「ロングスプリントスパイク」として明確なポジションを築こうとしている点です 。
100m・200mだけでなく、400mや400mH(ハードル)でステップアップを目指す中級者にとって、数少ない明確な選択肢となります。
スパイク:上級者とナイキ・アディダス
10秒台を目指すような上級者・エリートレベルになると、スパイク選びは単なるスペック比較ではなく、「自身の筋力と技術(走法)が、スパイクの持つ特性(反発の強さやタイミング)と完全に一致しているか」がすべてです。
テレビで見るトップ選手が履いている、ナイキやアディダスなどの「スーパーシパイク」に憧れる気持ちは、私もとても分かります。ですが、これらのモデルは履きこなすための「筋力」と「技術」を選手側に要求します。
スーパーシパイクを「履きこなす」難しさ
ナイキ マックスフライ の場合
ナイキの「マックスフライ」シリーズは、その強力な反発(浮く感じ)が特徴ですが、レビューによれば「筋力的にその力が強い人の方が向いてる」「このスパイクにちょっと合わせるような筋力が必要」とも言われています 。自分のパワーでプレートを制御しきれないと、かえってバランスを崩す可能性もあります。
アディダス プライムSP3 の場合
アディダスの「プライムSP3」のような非常に高反発なフラッグシップモデルは、うまく生かしきれないと「後半に失速してしまう」リスクがあると指摘されています 。序盤でパワーを使い果たしてしまうわけですね。
また、価格も非常に高価です。例えば「アシックス メタスピードSP ‘Paris’」モデルは、通販サイトで9万円を超える価格が提示されているケースもあります 。
高校生がこれらの高価格帯スパイクを「憧れ」だけで選ぶのは、パフォーマンス面でも経済面でも非常に危険です。
ナイキやアディダスだけでなく、アシックスの「メタスピードSP」 (マックスフライとは異なる「純粋な反発」を好む選手も )や、ミズノの伝統的なフラッグシップモデル「クロノインクスネオ」 (長年日本のトップ選手に愛用 )など、様々なメーカーの最上級モデルを(可能であれば)履き比べ、最終的には自分の感覚、「走りやすさ」 との相性が最も重要です。
400m・ハードル向けスパイク
100mや200mと比べ、400mや400mハードル(ヨンパー)は、レース後半のスタミナ維持や、スピードを殺さずにカーブを曲がり切る安定性も重要になります。
もちろん100m用の高反発スパイクで400mを走る選手も多いですが、これらの「ロングスプリント」種目でのパフォーマンスをサポートするために設計されたモデルも存在します。
ナイキ ズームスーパーフライエリート2 (Nike Zoom Superfly Elite 2)
ナイキの最上級モデルの一つですが、数百人のランナーデータに基づいて設計されたプレートが特徴です 。このプレート全体のピークがトラクション(駆動力)を発揮し、「カーブやターンでもしっかり地面をグリップする」と評価されています 。そのため、特に200m、400m、リレー種目で力を発揮しやすいと言われています。
ミズノ エックスブラストネオ2 (Mizuno X BLAST NEO 2)
中級者のセクションでも紹介しましたが、これはまさに「ロングスプリントスパイク」として、400mや400mHで記録を狙う中級者〜上級者の選手に非常におすすめできるモデルです 。
アシックス ヒートフラット12 (Asics HEATFLAT 12)
こちらは初心者向けモデルですが 、比較的ソールが厚めで足への負担を軽減する設計 は、400mやハードルに初めて挑戦する選手の「恐怖心」を取り除き、レース後半の粘りをサポートしてくれます。
ルール注意点:ソールの厚さとピン
最後に、シューズの性能追求と同時に、高校生選手(高体連)が準拠する「ルール」についてです。特に「ピンの長さ」については、これを知らないと試合で失格(DSQ)になる可能性もあるため、絶対に覚えておいてください。
ソールの厚さ(靴底の最大厚さ)の規定
まず、ソールの厚さです。日本陸上競技連盟(JAAF)の公式規定によれば、トラック競技における靴底の最大厚さは、シューズの種類によって異なります。
- スパイクシューズの場合: 靴底の最大厚さは 20mm を超えてはならない 。
- ノンスパイクシューズ(ロードシューズ等)の場合: 靴底の最大厚さは 40mm を超えてはならない 。
(出典:日本陸上競技連盟(JAAF)競技用靴(シューズ)の規則 )
高校生への影響として、市販されている主要メーカーの「陸上スパイク」は、すべてこの 20mm 規定をクリアしているため、ルール適合性の心配は基本的にありません。ご安心ください。
スパイクピンの長さと形状の規定
ソールの厚さ以上に、高校生選手が注意すべきは「スパイクピンの長さ」です。ここで多くの選手が「ルールの罠」に陥る可能性があります。
JAAFの基本ルールでは、全天候競技場(タータン)において、靴底から突出したピンの長さは「9mm を超えてはならない」と定められています 。
ルールの「落とし穴」とローカルルール
「じゃあ9mmのピンを使えばいいんだ」と考えるのは早計です。それが「落とし穴」になります。
JAAFの解説にもありますが 、実は、大会が開催される各都道府県・各競技場ごとの「ローカルルール(大会要項)」がJAAFの基本ルールよりも優先されることがあり、タータンの保護や安全性の観点から「7mmまで」または「8mmまで」と、別途厳しく定められている競技場が非常に多いんです 。
例えば、鳥取県の大会要項の実例では、県内の主要競技場でのピンの長さが「7mm」と指定されています 。
スパイク購入時に付属するピン(土用の 12mm ピン や 9mm ピン)をそのまま使っていると、試合当日のスパイクチェック(検定)で「ピンを交換しないと出場できません」と競技役員に言われ、慌てて売店に走る…なんてことになりかねません。
高校生への実践的アドバイスとして、以下の2点を強く推奨します。
- 「7mm」を基本とせよ: スパイク本体とは別に、競技場で使用するための「7mm のピン」を別途購入し、それを基本に装着するようにしましょう。
- 形状は「平行ピン」を: ピンの形状は「二段平行・平行タイプ」 が標準です。先端が鋭利なニードルピン(円すい状)は国内では使用不可とされる競技場が多いため、避けるのが無難です 。
そして最も大事なのは、試合前には必ず「大会要項」を熟読し、開催競技場のピン規定(長さと形状)を確認する習慣をつけることです。
総まとめ:高校生陸上短距離シューズのおすすめ
高校生のための陸上短距離シューズのおすすめ選び方、いかがでしたでしょうか。長くなりましたが、それだけ奥が深く、重要なテーマだということです。
大事なのは、「1足の最強シューズ」を探すのではなく、目的の違うシューズ(アップシューズ、トレーニングシューズ、スパイク)を組み合わせて、「自分だけの最適なシューズ・システム」を戦略的に構築することです。
最後に、レベルごとの「シューズ組み合わせ戦略」をまとめておきますね。
【戦略1】新入生・初心者(まず2足から)
- Shoe 1(練習): アップシューズ(例:アシックス ライトレーサー6)。日々のJOG、ドリル、走り込みの全てを支える基本の一足。
- Shoe 2(試合/専門): 初心者用スパイク。
- (A) 汎用性重視: ミズノ エックスファースト3 (土グラウンド練習が多い場合)
- (B) 短距離特化: アシックス ヒートスプリント13 (100m/200m希望の場合)
【戦略2】中級者(3足システムへの移行)
- Shoe 1(練習・JOG): アップシューズ(例:ライトレーサー6 or ターサーRP3)。
- Shoe 2(技術練習): 特化型トレーニングシューズ(例:アシックス ウインドスプリント3)。Shoe 1と必ず併用し、冬季練習やドリルで技術を磨く。
- Shoe 3(試合): 中級者向けタータン専用スパイク(例:SPブレード10 or エックスブラストネオ2 )
【戦略3】上級者・エリート(4足体制の検討)
- Shoe 1(JOG): アップシューズ 。
- Shoe 2(技術): トレーニングシューズ 。
- Shoe 3(スピード練習): 薄底アップシューズ(例:ハイパーレーサー)。スパイクを温存しつつ、スパイクに近い感覚でスピード練習を行うため。
- Shoe 4(試合): 自身の走法とパワーに合わせたフラッグシップスパイク(例:スーパーフライエリート2 , メタスピードSP )
シューズは「価格」や「トップ選手への憧れ」だけで選ぶのではなく、自身の現在のレベル、主戦場とする種目(100mか400mか)、そして出場する競技場のルール(7mmか9mmか)に基づき、最適な「システム」を構築することこそが、高校3年間の競技生活を支える最も重要な戦略となります。
この記事で紹介した情報は、あくまで一般的な目安や選び方の指針です。シューズのフィット感は、メーカーやモデルによって、さらには個人の足の形によって千差万別です。
最終的には、必ずスポーツ用品店の陸上コーナーなどで、専門知識のあるスタッフに相談し、実際に足を入れてみて(試着して)、自分の足に一番フィットするものを選ぶことが何よりも大切ですよ。皆さんの3年間の競技生活が、素晴らしいものになることを心から応援しています!


